アメリカで警察官の暴行によってジョージフロイト氏が暴行死した悲惨な出来事を受け、抗議活動やデモなどが広がっている。
デモは、黒人だけでなく、白人やヒスパニックなど、あらゆる人種の人達がこのデモに参加し、平和抗議活動を行っている。
ときには暴徒化した人たちによって街が破壊されたり炎上したりという大規模な出来事になっている背景には、アフリカ系アメリカ人に対するいまだ根深い人種差別や警察の過度な暴力に起因している。
この背景と脈々と続く歴史を私たちはきちんと知らなけばいけない。そして、国家の機能の一つである「暴力装置」に暴力で対抗しても、それは本質的な問題に解決しない。
では、自分たちに何ができるだろうか。大事なのは、次の世代、若い世代に対して、この悲惨な出来事を繰り返さないようにするために伝えていくことだ。次の世代に対しその姿勢を示し、行動していくこと、自分たちでこの悪しき問題を終わらせようとする気概こそ、大人の責任ではないだろうか。
しかし、遠いアメリカの、日本ではなかなか実感しずらい人種の問題をどのように理解するべきか。遠い出来事だからこそ、歴史やそこにある文化を学ぼうとする姿勢が必要だ。
ちょうど、COVID-19でうちでは保育園が休園となったため、期間中は子供とともに遊び、いろんな読み聞かせをしてきた。
その時、たまたま知り合いから紹介された本がある。それは、公民権運動の母であるローザ・パークス氏について描かれた絵本だった。
ローザ・パークスといえば、1955年当時、黒人と白人で公営バスの座る場所が決められていた時代、運転手の命令を聞かず白人の席を譲るのを拒否し、人種分類法違反の容疑で逮捕、その後、ローザの勇気ある行動からモンゴメリー・バス・ボイコット事件に発展し、そこからアフリカ系アメリカ人による公民権運動が盛り上がった文化的な象徴の人物として知られている人物。その後、非暴力運動や市民的不服従を掲げたキング牧師らの活動により、1964年の公民権法成立へとつながった。
そのローザ・パークスとその公民権運動の盛り上がりを、絵本で、子供でもわかりやすく完結にまとめたのが、この絵本だ。ローザ・パークスの勇気ある行動、そして、その行動をきっかけにあらゆる人達が立ち上がったことが、ブライアン・コリアーの素敵なイラストとともに描かれている。
正直、小学生くらいの子供じゃないと読んで理解は難しいかもしれないが、幼少期から子供の手元にこうした本があること、ふとしたときにこの本を手にし、読み聞かせをしていくという小さなことが大切なのではないだろうか。
もちろん、声をあげることは重要だ。しかし、声をあげるだけではない。次の人たちに語り継ぐこともすべきだ。そして、その次の世代は私たちの背中を見て育っているということを忘れてはいけない。