新年のご挨拶&ニュースレターを始めます

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2021年となりました。みなさんあけましておめでとうございます。

2020年は年始早々新型コロナウイルスの流行の兆しが出はじめたと思ったら一気に新型コロナウイルスが広がっていき、4月の緊急事態宣言の発令、その後も、都心部のみならず全国各地に感染が広がり、働き方や生活のあり方にも大きな影響を及ぼしました。

飲食業や旅行業、宿泊業などの三密を前提とした業態そのものの危機や、改めて問われる医療や公衆衛生という社会保障制度が持つ意味、それらが浸透していることによって私たちの生活の基盤が築かれていること、同時に、その基盤が危ぶまれている状態の中で日々を生活していかざるをえない環境となったことにおいて、私たちの社会のあり方そのものの構造を考えざるをえない状態になった年だったのではないでしょうか。

2020年をいかに過ごしたか

そんな2020年ですが、振り返れば、私自身は子供の成長と寄り添いながら、じっくりとした時間を過ごした日々でした。

緊急事態宣言下での保育園休園中、毎日午前中は公園に遊びに出かけ、午後は本を読んだりアニメを見たり。仕事は早朝や子供の昼寝の時間、夜の就寝後と時折の隙間時間でのやりくりの毎日でした。まだ小さい子供にとっては感染がどうのこうの、というのはあまり分からない年齢がゆえ、大人が行動を制限したり我慢させるのは難しい年頃。大人や社会の都合で子供の自由を押しつけてはいけないと思い、できるだけ楽しく自由に過ごす時間を作るように心がけました。

その後も感染対策に気をつけながらも、定期的にレンタカーでお出かけ、数ヶ月に一回、長野や北海道といった自然を満喫できる場所に出かけたこともあり、1年間、子供と楽しい時間を作れたのではと思っています。

仕事の面に関しては、新型コロナの影響はもろに受けました。特に、2020年3月に予定していた大型イベントが中止・延期となり、その後も春先や夏頃に予定していた企画も急遽の感染対策によるオンラインへの切替、行政案件の新型コロナによる予定の後ろ倒し、地方への出張の自粛などめまぐるしく変わる状況にどうにか対応しながら過ごしていました。

2021年早々も新たな緊急事態宣言発令で始まるようで、まだまだ予断を許さないなか、今後も感染症と共生しながら様々なプロジェクトのあり方を組み直す必要がでてきており、関係各所との調整などに奔走する日々を送っています。

地域経済と向き合う中で考えたこと

こうした新型コロナへの影響を受けながらも、自分自身としては社会との向き合い方や考え方にも変化が起きた年でもありました。

仕事でいえば、9月に出版した『実践から学ぶ地方創生と地域金融』は一つのきっかけとなりました。この5,6年ほど地域経済についての研究をするなか、よく言われる地方創生だとか地域活性というようなソフト面での開発にとどまらず、ハードとソフトのバランス、そしてそれらを支える仕組み作りへの興味の幅が広がりました。その中でも、同著は「地域金融」にフォーカスした本として、これまでの地域経済を考えるなかにおいてこれからの可能性を示唆する内容に仕上がったと思っています。

地域経済とそれを支える地域金融の関係性。そして、その地域金融という組織がもたらすネットワークの価値を再認識しながら、金融の仕組みをうまく取り入れながら地域経済の仕組みを再構築していく。さらに、その地域金融機関という組織そのものの多くが協同組合組織であり、株式会社銀行における営利追求型とは違う地域経済との共存共栄である金融組織の姿や協同組合組織という組織形態の構造やその成り立ちなどの歴史的経緯などが、古くて新しい可能性を秘めているなと考えるようになりました。

特に、欧州においてはポピュラーな組織形態でもある協同組合組織は、連帯経済と呼ばれる「つながりの経済」をもとにした市民主導の経済活動において協同組合組織としての活躍が指摘されています。また、欧州のみならずラテンアメリカなども協同組合組織は活発で、市場経済のオルタナティブとしてのあり方を見つめ直し、すべての人が尊厳と豊かな生活を作り上げていくための取り組みやその考えは大いに参考になるものであり、私自身もこれらの分野を特に注力して調査しているところです。

実は、2016年に共著者の一人として参加した『日本のシビックエコノミー』においても、この「つながりによる経済」を主体とした仕組み作りをテーマにした本をまとめたことともつながってきます。『日本のシビックエコノミー』の前著であり海外事例の翻訳書である『シビックエコノミー』を読み返すと、登場する事例の多くが協同組合的な組織形態であることに気づかされ、この数年追いかけてきた研究テーマがうまくクロスオーバーしてきながらも、これからの時代においてまさに求められる新たな経済活動を構築する仕組みや理論への踏み出していることを実感します。

折しも、2020年に読まれた本の一冊であろう『人新生の「資本論」』において、「コモンの再生」や「ワーカーズコープ」の可能性について著者の斉藤さんは言及しており、まさにそれらを実践・行動している市民主導の経済活動がすでに活発に活動しているのです。

新しく、ニュースレターを始めます

そこで、こうした私なりの研究テーマや日々考えていることを書き綴る場として、2021年から新たな取り組みとして、「ニュースレター」のプロジェクトを開始します。

https://common-good.theletter.jp/

テーマは「コモングッドをもとめて」。先にあげた協同組合組織も含めた、オルタナティブな社会を作り上げるためにこれから必要な考え方として、「コモングッド」という言葉がそれを体現しているように思えます。

コモンについて、宇沢弘文は「社会的共通資本」と表現し、「一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する。」と著書で指摘しています。私たちの社会における持続可能な社会的装置とはなにか、抽象的なものから具体的なものまで、コモンを取り巻く考えを基盤に、コモングッドとは何かを考えていきたいと思います。そこで、「コモングッド」について考え、探求し続けるために様々な情報などをコラムやインタビューなどのコンテンツとして配信していく活動を始めたいと思います。

なぜニュースレターなのかというと、欧州やアメリカでは数年前からニュースレターが盛り上がりを見せ始めています。その理由として、フェイクニュースやフィルターバブルによる分断など情報プラットフォームのあり方が問われるようになった昨今、良質な情報を届ける個人や団体からのレターを受け取り、考え、行動したいと思う人が増えてきたように思えます。

新型コロナを経て、私自身も情報の接し方が変化しました。日々、子供や生活にきちんと向き合うようになってから、SNSやインターネットの情報に触れる機会が格段と減ったように思えます。さらに、SNSを提供する企業のビジネスやその企業理念への批判も集まるなか、SNSへの過大な依存ではなく(もちろんSNSを待ったく使わないというわけではない)、オルタナティブな情報発信や受信ツールを自分自身で構築し、適切な情報環境を自ら開拓していこうと思うようになりました。さらに、私自身の考えを発信する場としてニュースレターという場を使って、読者とともにこれからの社会のあり方を一緒に考える場をつくっていけたらな、という思いからニュースレターを始めることとしました。

ニュースレターサービスとしてはSubstackなどが有名ですが、海外サービスよりもできれば国内のサービスを使いたいなと思っていたところ、theletter.jpというサービスを開発してるOutNowの濱本さんとのご縁があり、せっかくなら若い世代のベンチャーを応援したいという思いからtheletter.jpでニュースレターを始めることとしました。

https://common-good.theletter.jp/
登録はこちらからです。ぜひとも。

theletter.jpは無料購読ができる仕組みと、 配信した内容をウェブ上で掲載する仕組みがあり、ウェブ上で配信した内容の一部閲覧などができます。購読者や有料購読者向けのコンテンツ配信もできることから、購読者向けのイベントなども見据えて運用していければと思っています。

まずは週1程度の更新ですが、運用体制などができたら更新頻度も上げていき、公開内容、購読者限定、有料購読者限定の企画なども考えていきたいと思います。

日々、様々な情報が飛び交う中、いまだ感染拡大が広がる新型コロナの報道などが多くあるなか、目の前の出来事だけではなく、こうした時代だからこそ、ゆったりと物事を考え、次の世代に向けて私たちができる行動をしていくために何が必要なのかを考える一つとなれるような情報を届けていければと考えています。

また、2021年という年は東日本大震災から10年目の節目の年でもあります。震災復興から10年、その後の東北という地域のあり方を考える年でもあります。日本社会が直面する課題と向き合いながら、地球規模で起きている出来事へも想像力をもちつつ、国、社会、組織、個人と様々なレイヤーやプレイヤーとしてできることを考え、すべての人たちが豊かに生きる社会創造のための取り組みを実践し、経験や知識を共有していく年にしていきたいです。

どうぞ2021年もよろしくお願いいたします。