海外の若きリーダーたちから日本の政治は何を学べるか

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ヤフーが運営するFQ(Future Questions)に記事を書きました。FQは、毎月テーマを設定しながら、未来に対する考察や問いをもとに記事やイベントなどを行っている。FQの設立時にも、コンセプトに関してや今後のテーマ選定などでかかわらせてもらった。

今回のテーマは「政治」。海外の若い政治家の台頭を踏まえ、ニューリーダーと呼べる3人の人物にフューチャーした原稿を書いた。

https://fq.yahoo.co.jp/politics2019/5.html

アメリカのトランプ大統領の大統領就任を経て、社会で分断や議論が沸き起こるアメリカにおいて、民主党からヒスパニック系で元ウェイトレスだったAOC(アレクサンドリア・オカシオ・コルテス氏)。彼女の当選は大番狂わせとして世界を驚かせた。

彼女のバックグラウンドにおけるマイノリティな部分だけでなく、自身が市民運動にこれまで従事していたことから、コミュニティ・オーガナイジングのスキルをもとに大きなムーブメントとしてまとめあげてきた手腕も評価に値する。彼女の言動の一つ一つがとても端的で、まつキーワード化しやすいような切れ味の良い語りや振る舞いに、ある種のスター性も感じられる。

ウィメンズマーチでの演説も、かのキング牧師をオマージュしながら「Justice」というキーワードをもとに周囲を鼓舞させる内容だ。

2018年の中間選挙における女性議員の台頭についてのドキュメンタリー「レボリューション−米国議会に挑んだ女性たち−」がNetflixにあがっているが、AOCの他者に対する振る舞いやコメントの一言一言が、他の女性候補者との惹きつけるものの違いを感じたものだ。

もちろん、当選したあとの政治活動でどのような成果を残すかも求められる。グリーンニューディール政策やマイノリティに対する政策をどう実現していくか。日本においては、まだまだ女性議員が少ないことで世界的に知られている。マイノリティの支持を受けながら政策を実現するためには、政治家個人の資質もそうだが、コミュニティ自体が「この人を政治家に押し上げよう」とする動きを見せるべきではないだろうか。AOCの選挙活動をみても、それらのマイノリティに対する支持の大きさが見て取れる。彼女が当選した姿を他人事で終わらせるのではなく、自分たちに活かすべきだ。

オーストリアの若き首相ルイジ・ディマイオ氏は、若い頃から様々な政治活動に従事し、実績を着実に上げてきた人物だ。31歳という異例の年齢での首相就任は世界でも例をみない。それだけ、オーストリアにおける若者の支持や政治的手腕に対する周囲の期待も大きいのだろう。

日本では40代で若造、50,60になって一人前、といった風潮が政治の世界に多い。近年の首相になる年齢も50や60はざらだ。2006年の第一次安倍内閣でも、安倍首相は戦後最年少で戦後生まれとしては初めての内閣総理大臣だと言われたものの、就任時でも50歳を過ぎた年齢だ。しかし、海外では近年若い政治家、若い首相が相次いでる。日本では、総理大臣は難しいが、市長クラスは若い人物が台頭してきており、30代の市長もかなり多くなってきた。国会議員ではなく、都道府県の首長クラスであれば、より、地域に根ざした取り組みとして、若い政治家への期待を持ちやすいのかもしれない。20年後30年後を見据えた、ダイナミックな政策を奮ってくれる政治家に、私たちも期待とともに応援をすべきだ。

オーストリアのディマイオ氏について一つ気になるのは、その政治思想や保守的であることだ。もちろん、保守であることが悪いわけではないが、EUの現在の状況を踏まえた時、移民に対する取り組みや政治姿勢がどう世界的なオーストリアの立場に影響するのかは考えなければいけない。しかし、国内の失業率や雇用の問題に考えた時、どのようにバランスを取りながら政治を運営していくのか。今後の振る舞いが一層注目される人物だ。

最後に取り上げたニュージーランドの若き首相、ジェシンダ・アーダーン氏は、30代の女性、かつ妊娠・出産をした首相として、これまた世界的に話題を呼んだ人物だ。

記事でも言及しているが、パートナーシップのあり方、女性の社会進出のロールモデルとあろうとする姿、環境問題などこれからの社会が直面する問題に対して先手を打とうとする政策のあり方など、日本が参考にすべきものが数多くある。

日本ではGWが明けた5月6日から一週間、ニュージーランドでは手話Weekということで首相自ら、手話での動画配信を行った。ニュージーランドでは、世界で初めて公用語として手話を採用した国として知られており、社会が多様性を受け入れながら包摂した社会を作り上げようと取り組んでる。

政治家自らが、率先して姿を示そうとすることで、国民に対しても信頼感を持ちやすい、かつ、政策における社会的背景もきちんと理解した上で行動する姿が見て取れる。政治家としての振る舞い方、考え方としても新たな価値観を持った、これからの時代に合った存在だろう。

こうした記事を通して、日本が向き合うべき課題や政治との付き合い方を考えるきっかけとなる。世界で起きている出来事を対岸の出来事を捉えることなく、私たち自身がどうしていくのかを考え、新たな政治家を自分たちの手でつくりだそうとする行動こそが求められる。